(○月□日)

これまで言葉としてしか知らなかった奇跡というものを生まれて初めて体験した。

いや、大げさか?ともかくあんなにスムーズに事が運んだなんて今でも信じられない。

放課後。彼の教室の前。前日の意気込みとは裏腹に、私は最初の一歩が踏み出せないでいた。

ひたすら教室の前を往復してみたり、何気なく教室内を覗きこんだり、意味もなくニヤニヤしたりしていた。

こんなんじゃダメだ〜と頭を抱えているところをふと後ろからぽんと肩を叩かれた。

「どうしたの?佐藤さん。具合悪いの?」

彼だった。奇跡。しかも私のこと覚えていてくれた?奇跡。

私はどこか別次元へと消えつつある昨晩のモチベーションを必死にたぐりよせ

絞り出すように、あわあわと、「死んだ彼女の霊をコックリさんで呼び出してみよう計画(ウソだけど)」の説明をした。

彼ははじめ「なんでコイツが死んだ彼女のことを知ってるんだ?」って顔をしてたけど

説明を終えるころにはなぜかすっかり乗り気になっていた。

私って才能ある?いや、奇跡だわな。



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