「あの……、すいません」 「……」 「あの……」 「……」 無視かよ! 「ちょっと、おっさん!」 おっさんの肩に手をかけようとすると、その手がおっさんの体をすり抜けた。 これまでの人生の中で経験したことのない違和感。 触れてはいけないものに触れようとした感覚。 瞬時に頭の中で「霊」の一文字が浮かんで消えた。 部屋の気温が一気に下がったような気がした。 おっさんは相変わらず呑気に発泡酒を飲んでいる。 (次ページへ)